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相続で困らないための手続きチェックリスト
不動産がある場合の注意点

相続で困らないための手続きチェックリスト<br>不動産がある場合の注意点

大切なご家族が亡くなった後、遺された方には多くの手続きが待っています。特に市川市のような首都圏では不動産価値が高く、相続財産に不動産が含まれる場合は手続きがより複雑になりがちです。
不動産は高額な資産であり、「分けにくい」という性質を持つため、相続人同士のトラブルにつながりやすいのが実情です。2024年4月からは相続登記の義務化も始まり、これまで以上に適切な手続きが求められています。
株式会社NR企画では、市川市での不動産相続に関するご相談を数多く承ってきました。この記事では、相続手続きの全体像と不動産がある場合の特有の注意点、そして実用的なチェックリストをご紹介し、円満な相続のために知っておくべき情報をお伝えします。

相続発生直後に行うべき手続き(期限を意識!)

相続で困らないための手続きチェックリスト<br>不動産がある場合の注意点

相続が開始された直後は精神的につらい時期ですが、期限付きの手続きが多数あることを理解しておくことが大切です。

死亡届と関連手続き(7日以内)

  • 死亡届の提出:死亡を知った日から7日以内に市区町村役場へ
  • 死亡診断書のコピー:各種手続きで必要になるため、多めに取得しておく
  • 火葬許可証の申請:死亡届と同時に行う

社会保険関連の手続き(10日~14日以内)

  • 年金受給停止:国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内
  • 健康保険・介護保険の資格喪失:死亡から14日以内
  • 世帯主変更届:14日以内(該当する場合)

税務関連の手続き(4ヶ月以内)

準確定申告は相続開始から4ヶ月以内に行う必要があります。故人の生前収入に関する確定申告で、相続税計算時の債務控除にも関わる重要な手続きです。

相続の選択(3ヶ月以内)

相続放棄または限定承認を検討する場合は、相続を知ったときから原則3ヶ月以内に家庭裁判所への申述が必要です。故人に借金が多い場合などに検討しますが、一度決定すると原則として撤回できないため慎重な判断が求められます。

✓ポイント:相続放棄を選択しても、次の管理者が現れるまで財産の管理義務が残る場合があります。特に不動産がある場合は、この点も考慮して決断することが重要です。

 

相続手続きの全体像と主な流れ

期限のある手続きと並行して、財産の確定、分割、名義変更等を段階的に進めていきます。

遺言書の有無確認

まず遺言書があるかどうかを確認します。自筆証書遺言は原則として家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局保管や公正証書遺言の場合は不要です。

相続人の確定

故人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を取得し、相続人を特定します。戸籍の広域交付制度も活用できますが、一部制約があります。

相続財産の調査・評価

預貯金、不動産、株式、借金など、全ての財産を把握し評価します。不動産の評価は専門的知識が必要で、評価方法によって大きく金額が変わることがあります。

遺産分割協議

遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合います。法定相続分はあくまで目安であり、全員の同意があれば自由に分割できます。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議で合意した内容を書面にまとめます。この書類は不動産登記や預貯金手続き等で必須となる最も重要な書類の一つです。

法定相続情報一覧図の取得

相続関係を一覧にした図の証明書で、法務局で無料発行されます。戸籍謄本等の代わりになり、手続きを大幅に効率化できます。

✓ポイント:法定相続情報一覧図は複数通無料で取得でき、各種手続きを並行して進める際に非常に便利です。早めに取得しておくことをお勧めします。


関連記事:【相続の流れ】不動産を含む遺産相続で最初にやるべきこと

 

不動産相続で特に注意すべき重要ポイント

不動産が相続財産に含まれる場合、特有の評価方法や手続き、リスクがあります。

不動産の評価方法

評価対象

評価方法

用途

土地(路線価地域)

路線価方式:路線価×奥行価格補正率×面積

相続税・贈与税計算用

土地(倍率地域)

倍率方式:固定資産税評価額×一定倍率

相続税・贈与税計算用

家屋

固定資産税評価額×1.0

相続税・贈与税計算用

マンション

敷地利用権+区分所有権の合計

相続税・贈与税計算用

令和6年1月1日以降、居住用区分所有財産には区分所有補正率が適用される場合があり、評価方法に変更が生じています。

相続登記の義務化(2024年4月1日施行)

2024年4月1日から相続登記が義務化され、所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が必要となりました。

重要な点: - 2024年4月1日より前に相続した不動産も対象 - 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の可能性 - 過去の相続分も同日から3年以内に申請が必要

放置することのリスク

相続登記を放置すると以下のリスクが生じます:

  • 数次相続による権利関係の複雑化
  • 共有持分の勝手な売却
  • 債権者による差押え
  • 後世代でのトラブル拡大

遺産分割協議書への不動産記載の注意点

不動産を遺産分割協議書に記載する際は、登記事項証明書に記載されている内容通りに正確に記載することが必須です。固定資産税通知書の情報では不備になる可能性があります。

✓ポイント:市川市のような首都圏では不動産価値が高いため、評価方法の違いによる相続人間の争いが起こりやすくなります。専門家による適切な評価を早めに行うことが重要です。

 

遺産分割協議書の作成方法と注意点

遺産分割協議書は、相続人全員の合意内容を証明する重要な書類で、不動産登記、預貯金の名義変更、相続税申告などで必要になります。

記載すべき項目

  • 被相続人の情報:氏名、本籍、最後の住所、死亡日
  • 相続人の情報:氏名、住所、続柄
  • 個別の財産:不動産は特に正確に記載
  • 後日判明した財産の扱い:予期せぬ財産が見つかった場合の対応

作成時の重要な注意点

法定相続人全員が参加し合意することが前提です。一人でも欠けた協議は無効となります。

署名・押印について: - 相続人全員が署名 - 実印で押印(認印では手続きができない場合が多い) - 印鑑証明書も併せて準備

書類の管理: - 相続人の人数分作成し、各自保管 - 複数ページの場合は契印 - 複数通の場合は割印が必要

不動産記載の具体例

正確な記載例:

所在:千葉県市川市○○一丁目
地番:○○番○○
地目:宅地
地積:○○○.○○平方メートル

建物の場合:

所在:千葉県市川市○○一丁目○○番地○○
家屋番号:○○番○○
種類:居宅
構造:木造瓦葺2階建
床面積:1階 ○○.○○平方メートル
    2階 ○○.○○平方メートル

✓ポイント:「不動産の3つの壁」として、評価の壁(税務評価と分割評価の違い)、手続きの壁(複雑な申請手続き)、負動産の壁(維持管理コストや売却困難)があります。これらを理解して適切に対処することが重要です。

 

相続したくない場合の選択肢:相続放棄と限定承認

相続で困らないための手続きチェックリスト<br>不動産がある場合の注意点

故人に借金が多い場合など、マイナスの財産が多い場合に検討する選択肢があります。

相続放棄

プラス・マイナス全ての財産を一切相続しない方法です。

特徴: - 相続を知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述 - 手続きは比較的シンプル - 一度放棄すると撤回は原則不可 - 相続人ごとに単独で選択可能

限定承認

プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法です。借金があるかもしれないが、どうしても残したい特定の財産(自宅など)がある場合に有効です。

メリット
  • プラスの財産を超える借金を相続しない
  • 特定の財産(自宅など)を残せる可能性
デメリット
  • 相続人全員の同意が必要
  • 手続きが非常に複雑(公告、債権者への催告、財産の清算など)
  • 「みなし譲渡所得税」が発生する可能性
  • 手間と時間がかかる

現実的な利用状況: 限定承認の利用件数は相続放棄に比べて非常に少ないのが現状です。これは手続きの複雑さと、相続人全員の同意が必要という高いハードルがあるためです。

手続き

利用件数(年間)

主な理由

相続放棄

約25万件

手続きが比較的簡単

限定承認

約700件

手続きが複雑、全員同意必要

✓ポイント:限定承認は理論上は有効な制度ですが、実際の利用には多くの制約があります。借金が多い場合は、まず相続放棄を検討し、どうしても残したい財産がある場合にのみ限定承認を検討することをお勧めします。

 

不動産相続で起こりやすいトラブルと対応策

不動産はその性質上、相続トラブルの原因になりやすい資産です。事前にトラブルの可能性を知り、対策を講じることが重要です。

主なトラブル事例

相続先を巡る争い - 不動産を取得したい人が複数いる - 誰も取得したがらない(負動産化) - 維持費負担への不安

評価方法の対立 - 遺産分割時の評価額算出方法で意見が分かれる - 路線価と時価の乖離による争い - 生前贈与された不動産の評価を巡る問題

「とりあえず共有」の落とし穴 - 安易に共有名義にしてしまうと、以下の問題が生じます: - 売却時に全員の同意が必要 - 管理・維持費の負担分担でもめる - 使用方法を巡る対立 - 次世代での相続がさらに複雑化

古い名義や手続きの放置 - 相続登記がされず古い名義のまま放置 - 手続きが複雑化・困難化 - 共有名義人の同意が得られない

トラブルの予防策

生前対策 - 遺言書の作成(遺留分にも配慮) - 生前贈与の活用 - 家族間での話し合い

相続発生後の対策 - 早期の専門家相談 - 適切な不動産評価の実施 - 共有名義の回避

トラブル発生時の対処法

専門家への相談が最も効果的です。必要に応じてADR(裁判外紛争解決手続き)や裁判所の手続き(調停、審判)も活用できます。

✓ポイント:市川市のような首都圏では不動産価値が高いため、「とりあえず共有名義」による将来のトラブルリスクが特に大きくなります。共有状態を解消するための具体的な方法(協議による売却・分割、共有物分割請求訴訟など)も事前に理解しておくことが重要です。

 

困ったときに頼れる専門家

相続手続きは複雑で多岐にわたるため、専門家の力を借りることは有効な選択肢です。

弁護士

得意分野:相続人同士のトラブル解決、遺産分割協議の交渉、相続手続き全般、遺留分侵害額請求

こんな時に相談: - 相続人間で意見が対立している - 遺産分割協議がまとまらない - 遺留分を侵害されている可能性がある

司法書士

得意分野:相続登記(不動産の名義変更)、戸籍収集、法定相続情報一覧図作成、遺産分割協議書作成

こんな時に相談: - 不動産の名義変更をしたい - 戸籍関係の書類収集が大変 - 登記手続きを確実に行いたい

税理士

得意分野:相続税の計算・申告、相続財産の評価、節税対策、準確定申告

こんな時に相談: - 相続税がかかるかどうか知りたい - 相続税申告が必要 - 節税対策を検討したい

行政書士

得意分野:遺産分割協議書作成、相続関係図作成、財産目録作成(登記や税務申告を除く)

専門家選びのポイント

  • 初回無料相談を活用:多くの専門家が初回無料相談を提供
  • 複数の専門家が連携する事務所:ワンストップで依頼できて便利
  • 地域密着型の事務所:市川市の不動産事情に詳しい専門家を選ぶ

✓ポイント:相続案件では複数の専門分野が関わることが多いため、最初から連携体制の整った事務所に相談することで、効率的かつ確実に手続きを進めることができます。

 

相続手続きチェックリスト(実用版)

以下のチェックリストを活用して、手続きの漏れを防ぎましょう。

期限のある手続き(優先度:高)

手続き

期限

完了

死亡届の提出

7日以内

年金受給停止手続き

国民年金14日以内、厚生年金10日以内

健康保険・介護保険資格喪失

14日以内

世帯主変更届

14日以内(該当する場合)

相続放棄・限定承認申述

3ヶ月以内

準確定申告

4ヶ月以内

相続税申告・納税

10ヶ月以内

不動産の相続登記申請

3年以内(義務化対応)

基本的な手続き

手続き

完了

遺言書の有無確認と検認手続き

相続人の確定(戸籍謄本等の収集)

相続財産の調査・評価

法定相続情報一覧図の取得

遺産分割協議(遺言書がない場合)

遺産分割協議書の作成

不動産特有の手続き

手続き

完了

不動産の正確な評価(路線価・時価確認)

登記事項証明書の取得

遺産分割協議書への不動産正確記載

相続登記申請書類の準備

登録免許税の計算・準備

相続した空き家の管理方法検討

その他の名義変更等

手続き

完了

預貯金の名義変更・解約

株式・投資信託の名義変更

自動車の名義変更・廃車

生命保険金の請求

ゴルフ会員権等の名義変更

専門家への相談

相談内容

完了

弁護士(トラブル発生時)

司法書士(相続登記関連)

税理士(相続税関連)

不動産業者(売却検討時)

✓ポイント:このチェックリストは一般的な内容ですが、相続の状況は個々に異なります。特に不動産の種類や所在地、相続人の構成によって必要な手続きが変わるため、早めに専門家に相談してカスタマイズされたチェックリストを作成することをお勧めします。

 

まとめ

相続手続き、特に不動産が関連する場合は、多くの手続きと専門知識が必要です。期限がある手続きも多く、早めの情報収集と計画的な準備が重要となります。

特に注意すべきポイント:

1. 2024年4月1日からの相続登記義務化への適切な対応
2. 遺産分割協議書における不動産の正確な記載
3. 「とりあえず共有名義」によるリスクの回避
4. 専門家への早期相談

市川市のような首都圏では不動産価値が高く、評価方法や分割方法を巡るトラブルが起こりやすい地域です。株式会社NR企画では、このような不動産相続に関するご相談を承っており、適切な評価から売却まで、トータルでサポートいたします。

相続を円満に進めるためには、相続人同士の話し合いはもちろんのこと、必要に応じて専門家のサポートを積極的に活用することをお勧めします。一人で悩まず、まずは気軽に専門家にご相談ください。


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監修者情報

株式会社 NR企画
代表 北川圭一

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