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管理できない空き家はどうすればいい?
売却・寄付・解体の選択肢

管理できない空き家はどうすればいい?<br>売却・寄付・解体の選択肢

全国で空き家が急増し、約850万戸に達している現在、適切な管理ができずに悩んでいる所有者が増えています。特に市川市のような首都圏では、相続で取得した実家の管理に困っているケースが多く見られます。

2023年12月に施行された改正空家等対策特別措置法により、管理不全空き家という新たな区分が設けられ、指導・勧告の対象が拡大されました。放置すると固定資産税が最大6倍になるリスクもあり、早急な対策が求められています。

株式会社NR企画では、市川市での空き家問題に関する多くのご相談をいただいており、所有者の皆様が抱える悩みの深刻さを実感しています。この記事では、管理が困難な空き家に対する「売却」「寄付」「解体」という3つの主要な選択肢について、それぞれのメリット・デメリットと具体的な手続きを詳しく解説します。

空き家問題の現状と法改正の影響

急増する空き家数と社会的影響

総務省の住宅・土地統計調査によると、日本全国の空き家数は1998年の約576万戸から2018年には約849万戸へと大幅に増加しており、今後も増加が続くと予想されています。適切に管理されていない空き家は、以下のような深刻な問題を引き起こします:

  • 安全面のリスク:建物の倒壊や部材の落下による事故
  • 衛生面の問題:害虫の発生や悪臭の拡散
  • 防犯面の懸念:不法侵入や犯罪の温床化
  • 景観の悪化:地域の住環境や資産価値への悪影響

改正空家等対策特別措置法の重要ポイント

2023年12月に施行された改正法では、空き家対策が大幅に強化されました。

新設された「管理不全空き家」

従来の「特定空き家」(すでに危険な状態)の前段階として、管理不全空き家という区分が新たに設けられました。この段階から行政指導の対象となり、早期の対策が求められます。

固定資産税増税のリスク

管理不全空き家や特定空き家に指定され、行政から勧告を受けると: - 住宅用地特例が解除される - 固定資産税が最大6倍になる可能性 - さらに改善されない場合は命令、最終的には行政代執行のリスク

✓ポイント:改正法施行により、これまで「まだ大丈夫」と考えていた空き家でも、管理不全の段階から行政の監視対象となります。早期の対策が固定資産税の大幅増税を防ぐ重要な鍵となっています。

 

選択肢①:空き家を「売却」する

管理できない空き家はどうすればいい?<br>売却・寄付・解体の選択肢

売却は多くの空き家所有者が選択する、最も一般的な解決方法です。

売却の主なメリット

  • 管理負担からの解放:維持費用、光熱費基本料金、管理の手間が不要
  • 現金化による遺産分割の円滑化:相続人間での公平な分割が可能
  • 精神的負担の軽減:防犯や安全面の不安から解放
  • 将来リスクの回避:管理不全化や特定空き家指定のリスクを根本的に解決

売却方法の比較

※表は左右にスクロールして確認することができます。

売却方法

メリット

デメリット

適用ケース

古家付土地として売却

手間・費用が最小限

売却価格が安くなりがち

急いで処分したい場合

解体後に更地で売却

高値・早期売却の可能性

解体費用の負担、固定資産税増税リスク

より高値で売却したい場合

不動産会社による買取

最短での現金化が可能

相場より安い買取価格

確実・迅速な処分を優先する場合

空き家バンク活用

買主候補とのマッチング機会

売却まで時間がかかる可能性

地方の物件や特殊な事情がある場合

相続空き家の売却特例(3,000万円控除)

相続した空き家を売却する場合、最高3,000万円の特別控除が適用される可能性があります。

主な適用要件
  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物
  • 被相続人が居住していた家屋
  • 相続開始から3年以内の売却
  • 売却価格が1億円以下
  • 一定の耐震基準を満たすか、譲渡前に取り壊すこと
令和6年1月1日以後の改正内容
  • 相続人が3人以上の場合、控除額上限が2,000万円に変更
  • 耐震基準適合の期限が譲渡翌年2月15日までに緩和

参照:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」

信頼できる不動産会社の選び方
  • 相続・空き家問題に特化した経験を持つ業者
  • 地域密着型で市川市の不動産事情に精通している業者
  • 複数の解決手段を提案できる総合力のある業者

✓ポイント:売却は最も確実な解決策ですが、「負動産化リスク回避のタイムライン」を意識することが重要です。相続発生直後は税特例の恩恵を受けやすく、管理不全化の兆候が見られる段階では早期売却の検討、行政指導を受けた段階では迅速な対応が求められます。


関連記事:空き家を売却するなら今!損をしないための5つの準備

 

選択肢②:空き家を「寄付(無償譲渡)」する

売却が困難な場合、無償での譲渡も有効な選択肢となります。

無償譲渡の主な方法

隣接地権者への譲渡
  • 隣地統合によるメリット:土地の有効活用が可能
  • 境界問題の解決:隣地との境界トラブル回避
  • 管理の一体化:効率的な土地利用
不動産会社への譲渡
  • 解体費用を差し引いても価値がある土地の場合
  • 業者が解体・転売を前提とした引き取り
  • 手続きが比較的簡単
空き家バンクを通じた譲渡
  • 古民家再生や田舎暮らしを希望する人へ(自治体により仲介不動産会社を介する場合もあり)
  • 地域活性化への貢献
  • 思い出の詰まった家の有効活用

無償譲渡時の税金関係

無償譲渡では、譲渡する側と受け取る側の両方に税金が発生する可能性があります。

譲渡パターン

譲渡する側の税金

受け取る側の税金

個人→個人

原則非課税

贈与税

個人→法人

みなし譲渡所得税

法人税(受贈益)

法人→個人

法人税(みなし譲渡)

所得税(一時所得)

法人→法人

法人税

法人税

個人間贈与の注意点

贈与契約書の作成は必須です。書面によらない贈与は、履行前であれば解除される可能性があります。

負担付贈与の場合(住宅ローン残債の引き継ぎなど)は、売買と同様の契約不適合責任を負うため、免責特約の設定が重要です。

✓ポイント:無償譲渡は「コストから価値への転換」の典型例です。売却困難な空き家でも、地域資源としての潜在価値を見出し、移住促進や地域交流拠点として活用されることで、社会貢献と管理負担の解決を同時に実現できる可能性があります。

 

選択肢③:空き家を「解体」する

管理できない空き家はどうすればいい?<br>売却・寄付・解体の選択肢

建物を取り壊し、更地として新たな活用を図る方法です。

解体のメリット

  • 安全性の確保:倒壊リスクの根本的解決
  • 土地活用の選択肢拡大:駐車場、農園、建築用地など多様な利用
  • 近隣への配慮:景観改善と安全確保
  • 将来の売却準備:買い手が見つかりやすい状態

解体費用と補助金制度

解体費用の目安

一般的な解体費用は100万~200万円程度ですが、以下の要因で大きく変動します:

  • 建物の構造・規模:木造、鉄骨造、RC造により単価が異なる
  • 立地条件:重機の搬入路、近隣への配慮
  • 付帯工事:門・塀・車庫の撤去、基礎撤去
  • 特殊処理:アスベスト除去(別途高額費用)
解体補助金制度の活用

多くの自治体で独自の補助金制度を実施していますが、事前申請が原則です。

補助金制度の一例(※金額や条件は年度により変更される可能性があるため、必ず自治体の最新情報をご確認ください):

自治体

補助金額の例

主な条件

東京都足立区

最大100万円程度

特定空き家等

静岡県浜松市

最大90万円程度

老朽危険空き家

福岡市

最大150万円程度

特定空き家等

大阪府堺市

最大80万円程度

危険空き家

申請時の注意点
  • 工事前の申請が必須:事後申請は原則不可
  • 必要書類の準備:見積書、登記事項証明書、現況写真、納税証明書など
  • 自治体窓口での事前相談:要件確認と手続きの詳細把握

解体後の土地活用案

解体後は住宅用地特例が解除されるため、収益を生む活用が重要です。

比較的取り組みやすい活用方法:

  • 駐車場経営:初期投資が少なく安定収入(コインパーキング含む)
  • 資材置き場:一時的な収益確保
  • トランクルーム:管理が簡便
  • 貸し農園:地域・社会のニーズに応える

✓ポイント:解体は「負動産の壁」を乗り越える有効な手段ですが、住宅用地特例の解除による固定資産税増税を考慮した収益性の検討が不可欠です。補助金の活用により負担を軽減し、将来の土地活用につなげることで、資産から負債への転落を防げます。

 

売却・寄付・解体が難しい場合のその他の選択肢

相続土地国庫帰属制度

2023年4月27日から開始された新制度で、相続した土地を国に帰属させることができます。

主な要件
  • 建物が存在しないこと(更地であること)
  • 境界が明確になっていること
  • 特定有害物質による汚染がないこと
  • 管理費相当額(10年分)の負担金の支払い
制度活用のメリット・デメリット
  • メリット:完全な管理責任からの解放
  • デメリット:建物解体費用と負担金の支払いが必要

空き家管理サービスの活用

即座に処分できない場合、管理サービスの利用で劣化を防ぎ、将来の選択肢を残すことができます。

サービス内容と費用
  • 基本的な管理:月額0円から(条件有)
  • サービス内容:外観・内部点検、換気、庭木手入れ、郵便物管理
  • レポート提供:管理状況の定期報告

自治体・民間相談窓口の活用

市川市のワンストップ窓口

市川市は、空き家の賃貸・売買、リフォーム、解体などの活用方法についての提案を行っています。相談はインターネットまたは書面で申し込むことができ、市内の空き家所有者やその親族が対象です。

詳細はこちら:市川市空家等の有効活用等に関する相談業務

民間の総合相談サービス
  • 不動産会社、司法書士、税理士等の専門家連携
  • 売却から管理まで一括サポート
  • 初回無料相談の活用

✓ポイント:「誰に相談すべきかのナビゲーション」として、税金関係は税理士、登記関係は司法書士、売却は不動産会社、総合的な相談は自治体のワンストップ窓口が適しています。複数の専門分野にまたがる空き家問題では、連携体制の整った相談先を選ぶことが効率的な解決につながります。

 

状況別の判断指針

緊急度と建物状態による選択

※表は左右にスクロールして確認することができます。

緊急度

建物状態

推奨対策

理由

危険

即座に解体

安全確保と行政指導回避

良好

早期売却

特例活用と価値保持

普通

管理しながら売却検討

選択肢を残しつつ対策

良好

活用・賃貸検討

収益化の可能性

立地条件による戦略

都市部(市川市など) - 土地価値が高いため売却が有力 - 解体後の土地活用も選択肢豊富 - 管理サービスも充実

地方・過疎地 - 空き家バンクの活用 - 無償譲渡の検討 - 国庫帰属制度の利用

所有者の状況による判断

経済的余裕がある場合 - 管理サービスで時間的猶予を確保 - 最適なタイミングでの売却

経済的負担を避けたい場合 - 補助金を活用した解体 - 無償譲渡の積極的検討

 

専門家への相談の重要性

空き家問題は税金、法律、不動産、建築など多分野にわたる複雑な課題です。

専門家の役割分担

  • 弁護士:相続人間のトラブル、法的リスクの回避
  • 税理士:相続税、譲渡所得税、贈与税の相談
  • 司法書士:相続登記、国庫帰属制度の手続き
  • 不動産会社:売却、賃貸、市場価値の査定

早期相談のメリット

  • 選択肢の最大化:時間的余裕による最適解の検討
  • 費用の最小化:特例活用や補助金利用
  • リスクの回避:法的問題や税務問題の予防

 

まとめ

管理できない空き家への対策は、建物の状況、立地、所有者の事情、そして法改正の影響を総合的に考慮した判断が必要です。

重要なポイント:

1. 改正法による管理不全空き家のリスクを正しく理解する
2. 売却・寄付・解体それぞれのメリット・デメリットを比較検討する
3. 税制特例や補助金制度を最大限に活用する
4. 専門家との連携により最適な解決策を見つける

市川市のような首都圏では、適切な対策により空き家を資産として活用できる可能性が高くあります。株式会社NR企画では、このような空き家問題の解決をトータルでサポートしており、所有者の方々の多様なニーズにお応えできる体制を整えています。

一人で悩まず、まずは専門家にご相談いただくことで、「負動産」から「価値ある資産」への転換が可能になります。早期の対策が、より多くの選択肢と有利な条件での解決につながることを忘れずに、適切な行動を起こしていきましょう。


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監修者情報

株式会社 NR企画
代表 北川圭一

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