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不動産相続の税金と控除制度
損をしないための知識とは

不動産相続の税金と控除制度<br>損をしないための知識とは

不動産の相続は多くの人にとって一生のうちに何度もあることではないため、その複雑さに不安を感じる方も少なくありません。特に、税金や法的な手続きに関する正しい知識がなければ、予期せぬトラブルや損失が生じる可能性もあります。

市川市で長年不動産相続のサポートを行ってきた株式会社 NR企画の経験から、不動産相続において最も重要なのは事前の知識習得と適切な専門家との連携です。この記事では、不動産相続に関わる税金の基本、節税に役立つ控除・特例制度、そして円満な相続を実現するための手続きについて、実務経験を基に解説します。

不動産相続で発生する税金の基礎知識

不動産を相続する際には、主に「相続税」と「登録免許税」の2種類の税金が関係します。

相続税の仕組みと計算方法

相続税は、被相続人(亡くなった方)の財産を相続した際に課される税金です。不動産だけでなく、預貯金、有価証券などのプラスの財産、さらには借金などのマイナスの財産も対象となります。

課税対象と基礎控除額

すべての相続財産に課税されるわけではなく、遺産総額から「基礎控除額」を差し引いた金額が課税対象となります。基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」という計算式で算出されます。

法定相続人の数 基礎控除額
1人 3,600万円
2人 4,200万円
3人 4,800万円

相続財産の合計額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。

登録免許税とは

登録免許税は、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する「相続登記」の際に法務局へ納める税金です。税額は不動産の固定資産税評価額に0.4%の税率を掛けて算出されます。

相続登記は2024年4月1日から義務化されており、正当な理由なく3年以内に相続登記を行わない場合、10万円以下の過料が課せられる可能性があります。

出典:法務省 相続登記の申請義務化に関するQ&A

千葉県の相続税課税状況

千葉県は全国的に見て相続税の課税割合が比較的高い地域に位置しています。2022年の全国平均の相続税課税割合が9.6%であるのに対し、千葉県を含む首都圏では平均を上回る傾向にあります。

出典:相続税理士相談Cafe辻・本郷 税理士法人

特に市川市のような都心アクセスが良好で地価が高い地域では、基礎控除額を超える相続財産を持つ世帯の割合が高くなる傾向があります。これは主に不動産価値の上昇が要因となっており、従来は相続税の対象外だった世帯も課税対象となるケースが増加しています。

不動産取得税は原則かからない

相続によって不動産を取得した場合には原則として不動産取得税は課税されません。ただし、遺言によって相続人以外が不動産を受け取る「遺贈」の場合には、課税対象となることがあります。

✓ポイント:相続では不動産取得税はかからないため、売買での取得と比較して税負担が軽減されます。ただし、相続登記の義務化により、手続きを怠ると過料が発生するリスクがあるため、早めの対応が重要です。千葉県のような地価上昇地域では、相続税の課税対象となる可能性が高いため、事前の対策検討が特に重要となります。

不動産の評価方法

相続税を計算する上で、不動産の評価額を正確に算出することは非常に重要です。不動産の評価は、土地と建物で異なる方法が用いられます。

土地の評価方法

路線価方式

路線価(道路に面する土地の1平方メートルあたりの評価額)が定められている地域で適用される方法です。評価額は路線価に土地の面積と補正率を掛けて計算します。

倍率方式

路線価が定められていない地域で適用される方法です。評価額は固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率を掛けて計算します。

建物の評価方法

建物の評価額は、原則として固定資産税評価額が用いられます。一般的に、建物の固定資産税評価額は建築費用の50%から60%程度になることが多いとされています。

市川市の地価動向と相続への影響

市川市は千葉県内でも地価上昇が続いている地域で、2024年の基準地価は住宅地で平均29万6,711円/㎡(前年比+9.24%上昇)、商業地で平均148万8,000円/㎡(前年比+13.22%上昇)となっています。特に総武線の市川駅、本八幡駅、東京メトロ東西線の行徳駅などの駅周辺エリアで上昇率が高く、都心アクセスの良さから継続的な需要があります。

出典:土地代データ

この地価上昇は相続税計算に直接影響します。路線価は公示地価の約80%で設定されるため、地価上昇に伴い相続税評価額も上昇し、結果として相続税額が増加する傾向にあります。市川市の不動産を相続される方は、この地価動向を踏まえた事前の対策が重要です。

✓ポイント:不動産の評価額によって相続税額が大きく変わるため、正確な評価が重要です。特に市川市のように地価上昇が続く地域では、評価時期によって税額が大きく変動する可能性があります。土地については、形状や立地条件によって補正率が適用され、評価額が減額される場合があるため、専門家による適切な評価を受けることで、過大な相続税の支払いを避けることができます。

相続税を賢く節税するための控除・特例制度

高額になりがちな相続税の負担を軽減するためには、様々な控除や特例制度を理解し、適切に活用することが重要です。

小規模宅地等の特例

この特例は、亡くなった方が住んでいた土地や事業で使っていた土地などを相続した場合に利用できる制度で、土地の評価額を最大で80%減額できます。

宅地の種類 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

配偶者の税額軽減

配偶者が相続した財産の合計が、1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは相続税がかかりません。ただし、次の配偶者の相続(二次相続)まで見据えた計画が重要です。

生前贈与を活用した節税対策

暦年贈与

贈与税の基礎控除である年間110万円までの非課税枠を利用する方法です。受贈者一人あたり年間110万円までであれば、贈与税を支払うことなく財産を移転させることが可能です。

相続時精算課税制度

原則として60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与で利用できる制度です。累計2,500万円までの贈与であれば贈与税はかかりません。将来値上がりが予想される不動産を、価値が低いうちに贈与しておく場合に有効です。

贈与税の配偶者控除

婚姻期間が20年以上の夫婦間での居住用不動産の贈与に適用される特例で、暦年贈与の基礎控除110万円とは別に、最大2,000万円までが非課税となります。

✓ポイント:各種控除制度には適用要件や期限があるため、事前の計画が重要です。特に小規模宅地等の特例は節税効果が大きい反面、適用要件が複雑なため、専門家による詳細な検討が必要です。

不動産相続の基本的な手続きの流れ

不動産相続をスムーズに進めるためには、手順を理解し、計画的に進めることが不可欠です。

最初に確認すべき3つのポイント

遺言書の確認

遺言書の有無によって、相続手続きは大きく変わります。自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが、公正証書遺言の場合は公証人役場での確認が必要です。

相続人の確定

相続人になれる人は民法で定められた範囲(法定相続人)に限られており、被相続人の配偶者は常に相続人となりますが、子、直系尊属、兄弟姉妹の有無によって相続の割合が変わります。

相続財産の把握

不動産だけでなく、預貯金、有価証券などのプラスの財産、さらには借金などのマイナスの財産も漏れなく把握することが必要です。

不動産の4つの分割方法

現物分割

不動産をそのままの形で相続する最もシンプルな方法です。

代償分割

相続人のうちの一人が不動産を相続し、その代わりに他の相続人に代償金を支払う方法です。

換価分割

不動産を売却し、その売却代金を相続人で分割する方法です。

共有分割

複数の相続人で不動産を共有名義にする方法ですが、将来的に売却や改築を行う際に共有者全員の同意が必要となり、トラブルの原因となる可能性があります。

相続手続の具体的なステップ

遺産分割協議

相続人全員の合意が必要な話し合いで、合意内容を「遺産分割協議書」にまとめることが重要です。

相続登記(名義変更)

法務局で不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。

相続税の申告・納付

相続税は相続開始から10ヶ月以内に税務署に申告し、納税する必要があります。

出典:国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

✓ポイント:不動産相続の手続きは多岐にわたり、それぞれに期限があります。共有分割は一見公平に見えますが、将来的なトラブルの原因となりやすいため、慎重な検討が求められます。

不動産相続でトラブルを防ぐために

不動産が関わる遺産相続は、特にトラブルになるケースが非常に多いという実情があります。

トラブルになりやすいケース

市川市での不動産相続の実務経験から、以下のようなケースでトラブルが発生しやすいことが分かっています。

  • 不動産の分割方法について相続人間で意見が分かれる
  • 借地権や地上権などの権利関係が複雑で不明確
  • 前の世代の相続で相続登記がされておらず、権利関係が複雑化している
  • 不動産の評価額について相続人間で認識が異なる

専門家への相談の重要性

不動産の相続は手続きが複雑で専門的な知識が必要なため、弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

弁護士は遺産分割協議がまとまらない場合や相続人間でトラブルが発生している場合に、司法書士は相続登記に関する複雑な手続きを、税理士は相続税の計算や申告書の作成をそれぞれ専門的にサポートしてくれます。

✓ポイント:不動産相続のトラブルは事前の準備と適切な専門家への相談で多くが回避可能です。費用を惜しんで自己判断で進めた結果、より大きな損失を被るケースも少なくありません。

まとめ

不動産の相続は、相続税や登録免許税といった税金が関係し、その評価方法や計算、各種控除制度の活用が複雑です。小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減、生前贈与の非課税制度などを正しく理解し計画的に活用することで、税金の負担を大きく軽減することが可能です。

しかし、不動産の評価や特例の適用要件は複雑であり、一人で判断するのは困難な場合が少なくありません。市川市で数多くの不動産相続をサポートしてきた株式会社 NR企画では、相続に精通した税理士や司法書士などの専門家と連携し、お客様一人ひとりの状況に応じた最適な相続プランをご提案しています。

相続争いを避けて円満な資産承継を実現し、損をしないためにも、少しでも不安や不明な点があれば、弁護士、司法書士、税理士といった専門家へ早めに相談することが最も有効な選択肢です。適切な知識と専門家のサポートがあれば、不動産相続は決して恐れるものではありません。

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監修者情報

株式会社 NR企画
代表 北川圭一

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