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不動産コラム
2025/07/18
不動産相続でもめないために
兄弟間でよくあるトラブル事例と対策
不動産の相続は、兄弟間でのトラブルに発展しやすい問題の一つです。特に市川市のような都市部では、不動産価値が高く、相続財産に占める割合が大きいため、分割方法を巡って深刻な対立が生じることも珍しくありません。
たとえ普段仲の良い兄弟であっても、お金が絡むと意見の対立が生じやすく、遺産額が少ない場合でも深刻な争いになることがあります。株式会社NR企画では、市川市を中心とした不動産売却・仲介・買取を通じて、多くの相続案件に携わってきた経験から、円満な相続を実現するための具体的な対策をお伝えします。
不動産相続における兄弟間トラブルの現状
近年、家庭裁判所での相続関連の調停件数は年々増加傾向にあります。平成12年の8,889件から令和元年の12,785件まで、20年間で約44%増加しています(出典:裁判所ホームページ 司法統計年報家事事件編)。特に注目すべきは、遺産総額が1,000万円以下の「少額相続」でも全体の約34%を占めるという事実です(出典:司法統計年報家事事件編 令和元年度)。これは、どの家庭にも起こりうる身近な問題であることを示しています。
不動産相続が特に複雑になる理由として、現金のように均等に分けることができない分割の困難性、市場価格や相続税評価額など複数の評価方法による価値の変動、思い出の詰まった実家への感情的な価値などが挙げられます。また、司法統計によると、相続財産の中で最も争いの対象となりやすいのは土地で、被相続人1人あたりの平均額は約5,200万円と、現金・預貯金等の約4,100万円を上回っています(出典:国税庁 令和元年度統計年報)。
兄弟間でよくあるトラブル事例
事例1: 実家の評価額を巡る対立
父が亡くなり、市川市内の実家(評価額2,000万円)と預貯金200万円が遺産として残された。長男が実家に住んでいたが、次男・三男は「公平に分割するため実家を売却すべき」と主張。さらに不動産評価額について、長男は「古い家だから1,500万円程度」、他の兄弟は「立地が良いので2,500万円はある」と意見が対立し、話し合いが1年以上続いた。
事例2: 介護貢献度を巡る争い
母の5年間の介護を担った長女が、介護の貢献度(寄与分)を考慮して自宅を多く相続したいと主張したが、長男・次男は「介護は子として当然の義務」として寄与分を認めず、話し合いが平行線となった。
事例3: 生前贈与の取り扱い
父から次男が住宅購入時に1,000万円の援助を受けていたケースで、長男・三男は「特別受益として相続分から差し引くべき」と主張したが、次男は「贈与ではなく借用だった」として否定。贈与を証明する書類が不十分で、長期間の争いに発展した。
トラブルが発生する主な原因
制度的・法的な原因
遺言書の不存在が最も大きな原因です。遺産分割協議は相続人同士で行うことになりますが、不動産は現金のように均等に分割しにくいため、公平な分割が困難となり、兄弟間で利益が衝突しがちです。
相続財産の不動産偏重も深刻な問題です。土地や建物など処分が困難な不動産のみの場合、現金での調整ができず、不公平感が生じやすくトラブルの原因となります。
感情的・人間関係の原因
介護負担の不公平感や生前の親子関係の影響、コミュニケーション不足により、相続発生後に「聞いていた話と違う」という状況が生じ、不信感が募ることがあります。
市川市における特殊事情(独自分析)
市川市は東京都心部へのアクセスが良好なため、近年地価が上昇傾向にあります。親世代が購入した時期と現在の評価額に大きな差が生じることが多く、兄弟間での価値観の相違が生まれやすい環境です。また、住宅密集地では土地の形状や接道状況が複雑で、不動産の評価が困難なケースが多く見られます。
生前からできる予防策
遺言書の作成
公正証書遺言は最も確実で争いを防ぐ効果が高い方法です。公証人が作成に関与するため、要式不備による無効リスクが低く、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。作成時は各相続人の遺留分を侵害しないように配慮することが重要です。
家族間のコミュニケーション
年末年始やお盆など、家族が集まる機会を活用して、相続に関する話題を少しずつでも共有することが重要です。親の意向や財産状況を透明化することで、将来のトラブルを大幅に減らすことができます。
専門家との連携
弁護士、司法書士、税理士、不動産鑑定士など、各分野の専門家に早期に相談することで、最適な解決策を見つけることができます。生前から相続税の試算を行うことで、納税資金の準備や節税対策も検討できます。
✓ポイント:生前対策は時間をかけて進めることが重要です。特に、家族間のコミュニケーションを通じて信頼関係を築くことが、将来のトラブル防止において最も重要な要素となります。
相続発生後の適切な対応
初期対応
戸籍調査により、全ての法定相続人を正確に把握することが最初のステップです。相続人が間違っていると遺産分割協議が無効となるため、この段階での正確性が極めて重要です。
遺言書の確認も重要で、発見した自筆証書遺言は勝手に開封せず、家庭裁判所での検認手続きが必要です。
財産調査と情報開示
全ての相続人に対して、預金残高証明書、不動産評価証明書、査定書などの客観的な資料を提示することで、財産隠しなどの疑念を防ぐことができます。
調査状況や遺産分割協議の予定を定期的に共有することで、不安や不信感の増大を防ぎ、法定相続分や遺留分といった法律上の権利を正確に理解した上で冷静に話し合いを進めることが重要です。司法統計によると、遺産分割事件の約70%は1年以内に終結していますが、30%は1年を超える長期化となっています(出典:司法統計年報家事事件編 令和元年度)。
✓ポイント:情報の透明性を保つことで、兄弟間の信頼関係を維持しながら手続きを進めることが可能になります。
不動産の分割方法
分割方法 |
特徴 |
メリット |
デメリット |
推奨度 |
---|---|---|---|---|
現物分割 |
土地を物理的に分割 |
実際の不動産を取得 |
価値が不平等になる可能性 |
★★☆☆☆ |
代償分割 |
特定の相続人が取得し代償金を支払い |
公平な分割、不動産維持 |
代償金の支払い能力が必要 |
★★★★☆ |
換価分割 |
売却して現金で分割 |
最も公平、納税資金確保 |
思い出の家を失う |
★★★★★ |
共有分割 |
共有名義にする |
一時的な解決 |
将来の処分が困難 |
★☆☆☆☆ |
換価分割が最も公平で実現性が高い方法です。共有分割は将来のトラブルを先送りするだけの解決策であることが多いため、他の選択肢を十分に検討することが重要です。
✓ポイント:不動産の分割方法は、家族の状況、不動産の特性、相続人の意向を総合的に考慮して決定する必要があります。
トラブル発生時の対処法
専門家への相談
話し合いで解決できない場合は、相続に詳しい弁護士への相談を検討しましょう。弁護士は法的権利の正確な説明、遺産分割調停・審判の代理、感情的な対立の仲裁などをサポートできます。
話し合いで解決の余地がある場合は、司法書士による書類作成支援も有効で、弁護士よりも費用を抑えられる場合があります。
早期解決のメリット
長期間の争いは、弁護士費用、裁判費用、精神的コストなど多大な負担を生みます。また、時間が経過するほど感情的な対立が深刻化し、家族関係の修復が困難になります。
✓ポイント:トラブルが発生した場合は、感情的な対立を避け、法的な枠組みの中で冷静に解決を図ることが重要です。早期解決により、経済的・精神的負担を最小限に抑えることができます。
まとめ
不動産相続における兄弟間のトラブルは、遺産額の多寡にかかわらず、どの家庭にも起こりうる身近な問題です。市川市のような都市部では、不動産価値が高いため、特に注意深い対策が必要です。
最も効果的なのは、親が元気なうちから家族間で財産状況や意向を共有し、遺言書作成などの対策を講じることです。相続発生後は、財産状況の透明性を保ち、定期的な情報共有を行うことで、兄弟間の信頼関係を維持しながら手続きを進めることができます。
株式会社NR企画では、市川市を中心とした不動産相続に関する豊富な経験と専門知識を活かし、お客様の円満な相続実現をサポートいたします。不動産の評価、売却、相続手続きなど、あらゆる面でのご相談に対応いたします。
相続は人生の中でも特に重要な局面です。一人で悩まず、専門家のサポートを受けながら、家族の絆を大切にした解決を目指しましょう。トラブルを未然に防ぎ、円満な相続を実現するために、早めの対策と適切な準備が成功の鍵となります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを意図したものではありません。具体的な相続問題については、必ず専門家にご相談ください。