稿

相続登記が義務化へ
期限や罰則をわかりやすく解説

相続登記が義務化へ<br>期限や罰則をわかりやすく解説

2024年4月から相続登記が義務化され、市川市をはじめ全国の不動産所有者に大きな変化がもたらされました。この法改正により、これまで任意だった相続登記の手続きが法的な義務となり、期限を守らない場合は罰則が科される可能性があります。

株式会社NR企画では、市川市の多くのお客様から相続に関する不動産のご相談を承る中で、相続登記義務化への対応についてのお問い合わせが急増しています。本記事では、相続登記義務化の具体的な内容から期限、罰則、対処法まで、わかりやすく詳細に解説していきます。

相続登記義務化の背景と重要性

日本全国で所有者不明土地が約410万ヘクタール(九州の面積に相当)にも及ぶ深刻な社会問題を背景に、相続登記の義務化が実現されました。

これまで相続登記は任意の手続きでしたが、手続きを行わないことで不動産の権利関係が曖昧になり、土地の有効活用や公共事業の推進に大きな支障をきたしていました。特に市川市のような都市部においても、相続登記未了の不動産が点在し、地域の発展を妨げる要因となっていたのです。

2024年4月1日より施行された相続登記の義務化は、このような問題を解決し、不動産の権利関係を明確にすることで、より健全な不動産市場の形成を目的としています。

✓ポイント:相続登記義務化は個人の権利保護だけでなく、社会全体の不動産流通の円滑化を図る重要な制度改正です。

相続登記とは?基本的な理解

相続登記とは、被相続人(亡くなった方)が所有していた不動産の名義を、その不動産を相続した人の名義に変更する手続きのことです。

不動産の所有権は登記簿に記録されており、この登記簿上の名義を変更することで、法的に不動産の所有者が誰であるかを明確にします。登記を行うことで、第三者に対しても正当な所有者であることを主張でき、不動産の売却や担保設定などの各種手続きが可能になります。

従来は相続が発生しても登記を変更する義務はありませんでしたが、法改正により、相続により不動産を取得した相続人には登記申請の義務が課せられることになりました。

✓ポイント:相続登記は不動産の真の所有者を公的に証明する重要な手続きであり、放置すると様々な不利益が生じる可能性があります。

義務化の主要ポイントと期限

申請期限について

相続登記の申請期限は、「不動産を相続したことを知った日から3年以内」です。ここでいう「知った日」とは、以下の両方の条件を満たした日を指します:

  • 相続の開始があったこと(被相続人が亡くなったこと)
  • その不動産の所有権を取得したこと

つまり、自分が相続人であることを知っていても、被相続人が不動産を所有していることを知らなかった場合は、登記義務は発生しません。

ケース別の期限

状況 期限の起算点
遺言により相続 遺言によって不動産を取得したことを知った日から3年以内
遺産分割協議成立 相続開始を知った日から3年以内(不動産の存在を知らなかった場合を除く)
遺産分割協議未成立 3年以内に「相続人申告登記」または「法定相続分での登記」が必要

過去の相続への適用

2024年4月1日よりも前に発生した相続についても遡って義務化の対象となります。過去の相続に関しては、以下のいずれか遅い日から3年以内に申請が必要です:

  • 施行日(2024年4月1日)
  • 自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、該当する不動産の所有権を取得したことを知った日

具体的には、2027年3月31日までに相続登記を行えば、過去の相続についても義務を履行したことになります。

✓ポイント:過去の相続であっても義務化の対象となるため、放置していた相続登記がある場合は早急な対応が必要です。

罰則とリスクの詳細

過料による罰則

正当な理由なく期限内に相続登記または相続人申告登記の申請を行わなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過料が科されるまでの流れ:

  1. 登記官が相続登記の申請義務違反を把握
  2. 法務局が相続人に相続登記をするよう「催告」を実施
  3. 催告に応じず相続登記をしなかった場合、法務局が裁判所に過料事件として通知
  4. 裁判所が審議し、正当な理由がないと判断した場合に過料が決定

正当な理由とは

以下のようなケースでは「正当な理由」として認められる可能性があります:

  • 相続人が極めて多数で書類収集に時間がかかる場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲に争いがある場合
  • 申請義務を負う相続人が重病である場合
  • 経済的に困窮している場合

ただし、単に「忘れていた」という理由は認められません。

過料以外のリスク

過料を支払っても相続登記の義務がなくなるわけではありません。 さらに、以下のような深刻なリスクが伴います:

不動産の活用制限

登記簿上の所有者が亡くなった人のままでは、売却や担保設定、賃貸などの手続きができません。

権利関係の複雑化

長期間放置すると数次相続が発生し、相続人の数が膨大になることがあります。これにより遺産分割協議で全員の同意を得ることが極めて困難になります。

第三者による権利侵害

遺産分割協議が完了していない場合でも、他の相続人が法定相続分による相続登記を行い、自身の持分を第三者に売却する可能性があります。また、相続人の債権者が持分を差し押さえるリスクもあります。

✓ポイント:過料による罰則よりも、不動産の権利関係が複雑化し、将来の活用や処分が困難になるリスクの方が深刻な問題となります。

すぐに登記できない場合の対処法

相続人申告登記制度の活用

2024年4月1日から導入された新制度で、正式な相続登記が困難な場合に一時的に義務を履行できる方法です。

制度の概要:

  • 「その不動産の相続が開始したこと」
  • 「自身がその不動産の相続人であること」

この2点を法務局に申告することで、簡易的に登記義務を履行できます。

メリット:

  • 相続人のうち一人から単独で申請可能
  • 過料のリスクを回避できる
  • 登録免許税が不要

注意点: あくまで「相続人の一人であること」を名乗り出ただけで、不動産の所有権の具体的な取得割合や帰属が確定したわけではありません。遺産分割協議が成立した場合は、その日から3年以内に正式な相続登記を申請する必要があります。

法定相続分での暫定登記

遺産分割協議がまとまらない場合、相続人全員の共有名義で法定相続分に従って登記する方法もありますが、以下の理由から実務上はあまり選択されません:

  • 不動産が共有状態となり、売却や活用に共有者全員の同意が必要
  • 遺産分割協議成立後に再度登記をし直す必要がある
  • 追加の登録免許税などの費用が発生

✓ポイント:複雑な相続案件では相続人申告登記制度を活用し、時間的余裕を確保してから正式な相続登記を進める方法が効果的です。

手続きの流れと必要書類

基本的な手続きの流れ

  1. 遺言書の確認 遺言書の有無を確認し、存在する場合は内容を精査します。
  2. 被相続人所有不動産の調査 名寄帳(固定資産税課税台帳)などを確認し、被相続人が所有していた不動産をすべて特定します。
  3. 相続人の確定 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得し、法定相続人を確定します。
  4. 遺産分割協議(必要な場合) 法定相続分と異なる割合で遺産を分割する場合、相続人全員で協議し、遺産分割協議書を作成します。
  5. 必要書類の収集 各種証明書類を取得します。
  6. 登記申請書の作成 法務局のウェブサイトから様式を入手し、正確に記入します。
  7. 登録免許税の納付 収入印紙を購入し、申請書に貼付などして納めます。
  8. 法務局への申請 不動産の所在地を管轄する法務局へ申請書と添付書類を提出します。

主な必要書類

書類名 取得場所 費用目安
戸籍謄本 市区町村役場 450円~750円/通
住民票 市区町村役場 200円~400円/通
固定資産評価証明書 市区町村役場 200円~400円/通
印鑑証明書 市区町村役場 200円~400円/通

不動産の所在が不明な場合の調査方法

既知の不動産の登記状況確認:

  • 法務局で登記事項証明書を取得
  • インターネットサービス「登記情報提供サービス」を利用

所有不動産の全体把握:

  • 自治体の役場で名寄帳(固定資産税課税台帳)を取得
  • 2026年2月2日施行予定の「所有不動産記録証明制度」の活用も今後検討可能

✓ポイント:必要書類の収集は時間がかかることが多いため、期限に余裕を持って早めに着手することが重要です。

出典: 所有不動産記録証明制度(令和8年2月2日施行)|法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00599.html#mokuji10

費用について

登録免許税

不動産の固定資産税評価額 × 0.4%で算出されます。

例:固定資産税評価額が2,000万円の不動産の場合 → 2,000万円 × 0.4% = 8万円

その他の費用

  • 必要書類取得費用: 一般的に数千円から1万円程度
  • 司法書士報酬(専門家に依頼する場合): 事案の難易度や地域によって異なりますが、5万円~15万円程度が目安

費用を抑えるポイント

  • 必要書類は自身で取得する
  • 複数の司法書士事務所で見積もりを比較する
  • 無料相談を活用して事前に費用を把握する

✓ポイント:相続登記を放置することで発生する将来のリスクやコストを考慮すると、適正な費用での早期手続きが結果的に経済的です。

専門家への相談のメリット

司法書士の役割

相続登記の専門家である司法書士は、以下の業務を代行できます:

  • 必要書類の収集
  • 申請書の作成
  • 法務局とのやり取り
  • 法的観点からの適切なアドバイス

特に相続人が多数いる場合や、過去の相続が複雑になっている場合は、専門的な知識と経験が不可欠です。

弁護士への相談が必要なケース

以下の場合は弁護士への相談も検討が必要です:

  • 相続人間で既に紛争が生じている場合
  • 手続きに協力してくれない相続人がいる場合
  • 遺言の有効性に争いがある場合

無料相談の活用

多くの司法書士事務所では初回の相談を無料で行っています。複雑な相続案件ほど、専門家の助言を早期に得ることが重要です。

専門家選択のポイント:

  • 相続登記の実績が豊富
  • 説明が分かりやすく、信頼できる
  • 費用体系が明確
  • アフターフォローが充実している

✓ポイント:相続登記は複雑な法的手続きであり、専門家のサポートを受けることで、確実かつ効率的に義務を履行できます。

まとめ

相続登記の義務化は、個人の権利を守るだけでなく、市川市をはじめとする全国の健全な不動産市場の形成に寄与する重要な制度改正です。3年という期限は意外と短く、特に複雑な相続では相当な時間を要するため、早めの対応が不可欠です。

株式会社NR企画では、市川市の皆様の不動産に関する様々なお悩みにお応えしており、相続登記についても適切な専門家をご紹介することが可能です。相続登記を放置することで生じる将来のリスクを避けるためにも、疑問や不安がある場合は、専門家である司法書士への早期相談を強くお勧めします。

期限が近づいてから慌てることのないよう、今こそ適切な行動を起こし、大切な不動産の権利関係を明確にしていきましょう。

参考リンク

一覧に戻る

監修者情報

株式会社 NR企画
代表 北川圭一

詳しく見る

お問い合わせ

いつでもお気軽にご相談ください。

Copyright © 株式会社 NR企画
All Rights Reserved.

トップに戻る