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不動産コラム
2025/09/20
空き家があると相続トラブルになる?
早めに売却すべき理由
日本の空き家問題は年々深刻化し、2023年時点で全国の空き家数は約849万戸に達しています。特に市川市のような首都圏でも空き家の増加は顕著で、多くの所有者が「いずれ使うかもしれない」「売るタイミングがわからない」という理由で放置してしまっているのが現状です。
しかし、空き家を放置することは想像以上のリスクを伴います。株式会社NR企画では市川市の多くのお客様から空き家に関するご相談を承る中で、放置による深刻な問題に直面されたケースを数多く目の当たりにしてきました。本記事では、空き家が相続トラブルを招く理由と、早期売却が最適な解決策である理由について詳しく解説します。
空き家を放置する4つの深刻なリスク
継続的な経済的負担
空き家を所有し続ける限り、固定資産税や都市計画税が毎年課税されます。市川市のような首都圏では、年間10万円から15万円程度の税負担が一般的で、これを何十年も支払い続けると数百万円もの出費となります。
さらに、建物の劣化を防ぐための修繕費、庭木の剪定、害虫駆除、火災保険料などの維持費も継続的に発生します。特に遠方に住んでいる場合は、管理会社への委託費用として月額5,000円から1万円程度が必要になることも珍しくありません。
利用しないのにお金だけが出ていく、いわゆる「負動産」状態に陥ってしまうのです。
建物の急速な劣化と資産価値の低下
空き家は人が住まなくなると、通常の住宅の2倍から3倍のスピードで劣化が進むといわれています。日本の高温多湿な気候では、通気や清掃がされない住宅は短期間でカビやシロアリの被害に遭うリスクが高まります。
具体的には以下のような劣化が連鎖的に発生します:
- 通風不足による湿気の増加とカビの異常繁殖
- シロアリの発生と木材の損傷
- 水回りの劣化(排水口の封水蒸発による悪臭など)
- 外壁や窓周りのコーキング劣化による雨水侵入
- 屋根材や外壁材の劣化
特に木造住宅は築20年を超えると建物の評価がほぼゼロとされるため、「将来のために保有する」という考え方は、むしろ資産価値を減少させることにつながります。
防犯・防災上のリスクと法的責任
人の出入りがない空き家は、不法侵入や放火などの犯罪の標的となりやすく、近隣住民への迷惑や安全上の問題を引き起こす可能性があります。
特に深刻なのは自然災害時のリスクです。台風や地震により空き家の屋根材や外壁材が飛散したり、建物の一部が倒壊したりした場合、民法第717条の工作物責任により、所有者が損害賠償責任を負うことになります。実際に数千万円の賠償金が発生したケースもあり、所有者には大きな法的リスクが伴います。
「特定空き家」指定による重いペナルティ
2015年に施行され、2023年に改正された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、周辺に悪影響を及ぼす危険な空き家は「特定空き家」に指定されます。
特定空き家に指定されると:
- 固定資産税の住宅用地特例が解除され、税額が最大6倍に増加
- 改善命令に従わない場合は50万円以下の罰金
- 最終的には行政代執行による強制解体(費用は所有者負担)
このようなペナルティは、単なる不動産管理の問題ではなく、法的リスクを伴う深刻な問題です。
✓ポイント:空き家の放置は経済的負担だけでなく、法的責任も伴う重大なリスクとなります。早期の対策が被害を最小限に抑える鍵となります。
空き家が相続トラブルを招く理由
相続人同士の意見対立
複数の相続人で空き家を共有している場合、その維持管理の方法や費用負担、売却や活用方針を巡って相続人同士の意見が対立することが頻繁に発生します。
典型的な対立パターンとしては:
- 「売却派」と「保有派」の意見の相違
- 維持費用の負担割合に関する不満
- 管理責任の押し付け合い
- 利用方法についての意見の不一致
数次相続による権利関係の複雑化
時間が経過すると、相続人の高齢化や死亡により新たな相続(数次相続)が発生し、権利関係が複雑になります。最初は2〜3人の相続人だったものが、次の相続により10人以上の共有者が生まれることも珍しくありません。
このような状況になると、全員の同意を得ることが極めて困難になり、空き家の処分がさらに難しくなってしまいます。
心理的・精神的負担の増大
空き家を抱え続けることで生じる心理的負担も見過ごせません:
- 「いつか何か問題が起きるのではないか」という不安
- 遠方の空き家の状態確認に伴うストレス
- 近隣住民からの苦情への対応
- 相続人としての責任の重さ
これらの負担は、家族間の人間関係にも悪影響を及ぼし、相続トラブルをさらに深刻化させる要因となります。
✓ポイント:空き家の共有は相続人同士の関係悪化の原因となりやすく、時間の経過とともに解決がより困難になります。
出典
空家等対策の推進に関する特別措置法|国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000035.html
早めに売却すべき理由とメリット
税制優遇の活用チャンス
相続した空き家を売却する場合、「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」(通称:空き家の3,000万円控除)という税制優遇を受けられる可能性があります。
この制度の主な条件は以下の通りです:
条件項目 | 詳細内容 |
---|---|
売却期限 | 相続開始日から3年後の12月31日まで |
建物要件 | 被相続人が一人で住んでいた家屋 |
使用状況 | 相続開始時から売却時まで事業・貸付・居住に供されていない |
建物基準 | 耐震基準を満たす、または解体して売却 |
この特例を利用すると、売却による譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、大幅な節税効果を期待できます。
経済的・精神的負担からの完全な解放
空き家を売却することで得られる解放感は計り知れません:
経済的メリット:
- 年間数十万円の固定資産税・維持管理費の負担がなくなる
- 売却代金を相続税の支払いや将来への投資に活用できる
- 災害時の損害賠償リスクから解放される
精神的メリット:
- 空き家に関する不安やストレスがなくなる
- 遠方への確認や管理の手間が不要になる
- 相続人としての重い責任から解放される
資産価値の維持と売却機会の確保
空き家は時間の経過とともに売却が困難になるケースが多々あります。その主な理由として:
- 建物の老朽化による資産価値の下落
- 周辺環境の変化(人口減少など)による市場価値の低下
- 購入希望者のニーズ変化への対応の遅れ
建物が急速に劣化する前に売却することで、より有利な条件での売却が可能になります。少子高齢化により不動産需要は減少傾向にあるため、市場環境が悪化する前の早期売却が賢明です。
相続人間トラブルの完全回避
空き家を売却し現金化することで:
- 相続人同士の意見対立がなくなる
- 公平な遺産分割が可能になる
- 将来の数次相続に伴う複雑化を防げる
- 家族間の人間関係を良好に保てる
現金であれば分割も容易で、各相続人が自分の判断で自由に活用できるというメリットもあります。
✓ポイント:早期売却は税制優遇の活用、負担の解放、資産価値の維持、そして家族関係の円満な維持を同時に実現する最適な選択肢です。
出典
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
空き家売却の具体的なステップ
相続登記の実施
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、相続開始を知った日から3年以内に手続きを行わないと10万円以下の過料の対象となります。空き家売却の第一歩として、必ず相続登記を完了させる必要があります。
必要書類の例:
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 固定資産税評価証明書
空き家の現況調査と方針決定
空き家の売却を成功させるためには、正確な現況把握が欠かせません:
調査項目:
- 建物の劣化状況と構造の確認
- 築年数と耐震基準への適合状況
- 前面道路との接道状況
- 境界の明確化
- 用途地域や建築制限の確認
処分方針の選択:
- 建物付きでの売却
- 解体後の更地での売却
- リフォーム後の売却
地域の特性や建物の状況に応じて、最も有利な売却方法を専門家と相談しながら決定します。
複数業者への査定依頼
必ず3社以上の不動産会社に査定を依頼することをお勧めします。不動産会社によって得意分野や査定方法が異なり、査定額に大きな差が出ることがあるためです。
査定時の比較ポイント:
- 査定額の妥当性
- 売却戦略の提案内容
- 担当者の対応や専門知識
- 空き家取引の実績
- アフターフォローの充実度
売却方法の選択
空き家の売却方法には主に2つの選択肢があります:
売却方法 | メリット | デメリット | 適用ケース |
---|---|---|---|
仲介 | 市場価格での売却が期待できる | 売却まで時間がかかる可能性 | 需要のある地域の比較的新しい物件 |
買取 | 迅速な売却が可能、確実性が高い | 市場価格より低くなる場合がある | 古い物件、需要の少ない地域、早急な売却希望 |
物件の状況や売主の希望に応じて最適な方法を選択します。
✓ポイント:空き家売却の成功は正確な現況把握と適切な業者選択にかかっています。複数の専門家の意見を聞き、比較検討することが重要です。
出典
相続登記の申請義務化について|法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00435.html
売却時の注意点と専門家の活用法
空き家専門業者の活用
空き家の取引に特化した不動産会社への相談が解決への近道です。これらの業者の特徴として:
- 家財道具が残っていても現状のまま買取可能
- 再建築不可物件や遠隔地の物件にも対応
- 空き家特有の問題に精通した専門知識
- 迅速な対応と確実な取引実行
一般的な不動産会社では敬遠されがちな条件の悪い空き家でも、専門業者であれば適切な価格で買い取ってくれるケースが多くあります。
各種制度の活用検討
自治体の空き家バンク: 地域によっては自治体が運営する空き家バンクも選択肢の一つです。ただし、需要の少ない地域では長期間売れない可能性があるため、早期売却を優先するなら通常の不動産取引と並行して検討することが重要です。
解体費用補助: 多くの自治体で空き家の解体費用に対する補助制度が設けられています。更地での売却を検討している場合は、事前に確認しておくとコスト削減につながります。
専門家チームとの連携
空き家売却を成功させるためには、複数の専門家との連携が効果的です:
- 司法書士: 相続登記の手続き代行、売買契約時の所有権移転登記
- 税理士: 譲渡所得税の計算、空き家特例の適用可否判断、確定申告のサポート
- 土地家屋調査士: 境界確定測量、建物滅失登記(解体時)
- 不動産鑑定士: 正確な不動産価格の算定、相続税評価額の確認
契約時の重要な確認事項
売却契約を締結する際は、以下の点を必ず確認します:
- 瑕疵担保責任の範囲と期間
- 引渡し条件(現状渡しの可否)
- 手付金と残代金の支払い時期
- 契約解除条項
- 諸費用の負担区分
特に古い空き家の場合、予期せぬ瑕疵が発見される可能性があるため、売主の責任範囲を明確に定めておくことが重要です。
✓ポイント:空き家売却は専門的な知識を要する複雑な取引です。信頼できる専門家チームとの連携により、安心して取引を進めることができます。
まとめ
空き家を放置することは、経済的負担の継続、建物の急速な劣化、法的責任の発生、そして相続人同士のトラブルなど、計り知れないデメリットを伴います。市川市のような首都圏でも、空き家問題は深刻化しており、「とりあえず様子を見る」という選択が結果的に最も高くつくケースが多いのが現実です。
一方で、空き家を早めに売却することには多くのメリットがあります。税制優遇の活用、経済的・精神的負担からの解放、資産価値の維持、そして何より相続人同士のトラブル回避という効果は非常に大きなものです。
株式会社NR企画では、市川市の皆様の空き家問題解決に向けて、信頼できる専門業者のご紹介から売却戦略のアドバイスまで、包括的なサポートを提供しています。今日から一歩を踏み出し、複数の専門家に相談することで、将来の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
空き家問題でお悩みの方は、一人で抱え込まずに、まずは現状の正確な把握から始めてみてください。適切な専門家のサポートを受けることで、最適な解決策が必ず見つかります。