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不動産の相続税はいくらかかる?
基礎控除や特例の使い方

不動産の相続税はいくらかかる?<br>基礎控除や特例の使い方

「親から実家を相続する予定だけど、相続税がいくらかかるか不安」「不動産があると相続税が高くなると聞いたけど、節税する方法はないの?」このような悩みを抱えている方は少なくありません。

結論から言えば、不動産の相続税は特例を活用することで大幅に減額できます。特に市川市で不動産を相続する場合、適切な評価方法と制度の理解が納税額を左右する重要なポイントになります。

不動産は現金のように簡単に分けられないため、相続税の計算や納税が複雑になりがちです。しかし基礎控除や小規模宅地等の特例を正しく理解すれば、想像以上に税負担を抑えられる可能性があります。

この記事では、不動産の相続税がいくらになるのか、基本的な計算方法から税額を大きく減らせる特例の使い方まで、実例を交えながら解説していきます。株式会社NR企画では市川市の相続不動産に関する相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

1. まずは知っておきたい!相続税の基本

相続税は全ての相続で発生するわけではありません。遺産総額が一定額を下回る場合、申告も納税も不要になります。

この「一定額」とは基礎控除額のことで、多くの方が最初に確認すべき重要な指標です。基礎控除額を理解することで、そもそも相続税がかかるのか、それとも非課税なのかを判断できます。

1-1. そもそも相続税は必ずかかるわけではない

相続税には基礎控除という仕組みがあり、遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は一切かかりません。 この点を理解しているかどうかで、不必要な心配を避けられます。

実際、国税庁の公表では、令和5年分の課税割合は9.9%です。つまり、約10人に1人が相続税の対象となっており、多くの相続では相続税が発生していないのが現状です。

出典: 相続税の改正に関する資料|財務省|https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/property/e02.htm

1-2. 基礎控除額の計算方法

基礎控除額は次の計算式で求められます。

基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)

出典: No.4152 相続税の計算|国税庁| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

具体的な例で見ていきましょう。

法定相続人の数 計算式 基礎控除額
1人(子のみ) 3,000万円 + 600万円 × 1人 3,600万円
2人(配偶者と子) 3,000万円 + 600万円 × 2人 4,200万円
3人(配偶者と子2人) 3,000万円 + 600万円 × 3人 4,800万円
4人(配偶者と子3人) 3,000万円 + 600万円 × 4人 5,400万円

法定相続人が増えるほど基礎控除額も大きくなるため、相続税がかかる可能性は低くなります。ただし、法定相続人の数には一定のルールがあるため、正確な判断には専門家の助言が有効です。

1-3. 相続税の計算ステップ

相続税は以下の4つのステップで計算します。シンプルに見えますが、各段階で適切な評価と判断が求められます。

ステップ1:遺産総額の算出
現金、預金、不動産、有価証券など、全ての相続財産の評価額を合計します。不動産の評価方法については次章で詳しく解説しますが、時価とは異なる評価額が用いられる点に注意が必要です。

ステップ2:課税遺産総額の計算
遺産総額から基礎控除額を差し引いて、「課税遺産総額」を求めます。この金額がマイナスになる場合は、相続税が発生しません。

ステップ3:相続税の総額を算出
課税遺産総額を法定相続分で取得したと仮定し、各相続人の税額を計算して合計します。この段階では実際の相続割合ではなく、法定相続分で計算する点がポイントです。

ステップ4:各人の納税額を確定
実際に相続した財産の割合で按分し、配偶者の税額軽減などの各種控除を適用して、最終的な納税額を算出します。

✓ポイント: 相続税の計算は複雑に見えますが、基礎控除額を超えなければ申告不要です。まずは遺産総額と基礎控除額を比較することから始めましょう。また、特例を適用することで課税遺産総額を大幅に圧縮できるため、後述する特例の理解が節税の鍵となります。

2. 不動産の相続税評価額を計算する

不動産の相続税評価額は、固定資産税評価額や時価とは異なる方法で算出されます。この評価方法を理解することで、実際の相続税額を正確に把握できます。

理由は、相続税法で定められた評価基準があり、一般的に時価よりも低めに評価される仕組みになっているからです。特に土地の評価には路線価や倍率方式といった独自の計算方法が用いられます。

2-1. 土地の評価方法

土地の評価方法は、所在地によって2つに分かれます。

出典: No.4602 土地家屋の評価|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4602.htm

路線価方式
路線価方式は、国税庁が毎年7月頃に公表する路線価(道路に面する土地の1㎡あたりの価格)を基準に評価する方法です。市川市のような都市部では、この方式が適用されるケースが多くなっています。

計算方法は「路線価 × 土地面積 × 各種補正率」となり、土地の形状や接道状況によって補正が加えられます。例えば、角地であれば評価額が上がり、不整形地であれば下がるといった調整が行われます。奥行価格補正や間口狭小補正など、様々な補正率を反映して正確な評価額を算出します。

出典: No.4604 路線価方式による宅地の評価|国税庁| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604.htm
出典: 令和6年分の路線価等について|国税庁| https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2024/rosenka/index.htm

倍率方式
路線価が定められていない地域では、倍率方式を用います。これは固定資産税評価額に、国税庁が定める倍率をかけて算出する方法です。

計算式は「固定資産税評価額 × 倍率」となり、路線価方式よりもシンプルな計算で済みます。倍率は地域ごとに異なり、国税庁のウェブサイトで確認できます。

2-2. 建物の評価方法

建物の評価は土地に比べて比較的シンプルです。

原則:固定資産税評価額をそのまま使用
建物は原則として、毎年送付される固定資産税の納税通知書に記載された「固定資産税評価額」が、そのまま相続税評価額となります。国税庁は建物評価を固定資産税評価額×1.0と定めており、時価比率は一律の公式として示されていません。

例外:賃貸物件の場合はさらに減額
他人に貸している賃貸物件(貸家)の場合、さらに評価額が減額されます。具体的には「固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)」で計算され、借家権割合は通常30%です。

例えば、固定資産税評価額が3,000万円の賃貸アパートで賃貸割合が100%の場合、相続税評価額は「3,000万円 ×(1 - 0.3 × 1.0)= 2,100万円」となり、900万円も評価額が下がります。

✓ポイント: 不動産の相続税評価額は、国税庁が定める評価方法に基づいて算出されます。土地は路線価方式または倍率方式で、形状・接道等の補正を反映します。建物は原則、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。正確な評価には専門知識が必要となるケースも多いため、市川市内の不動産であれば地域に詳しい専門家への相談が有効です。

3. 相続税を劇的に減らす2つの特例

特例をうまく活用すれば、相続税を大幅に減額できます。ただし、適用には要件を満たす必要があり、必ず申告が必要になる点に注意が必要です。

なぜなら、これらの特例は適用要件が厳格に定められており、要件を満たしていても申告しなければ特例を受けられないからです。特に小規模宅地等の特例は節税効果が非常に大きいため、確実に活用したい制度です。

3-1. 小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、被相続人が住んでいた宅地や事業用宅地を相続した場合、宅地の評価額を最大80%減額できる制度です。この特例の節税効果は絶大で、数千万円単位で相続税が減額されるケースも珍しくありません。

特例の適用範囲は居住用だけでなく、事業用や貸付事業用にも及びます。それぞれ減額割合と限度面積が異なるため、正確な理解が必要です。

出典: No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm

適用要件と区分

宅地の区分 減額割合 限度面積 主な要件
居住用宅地 80% 330㎡ 配偶者:無条件/同居親族:居住・保有継続/家なき子:細要件充足
事業用宅地 80% 400㎡ 事業継続要件など
貸付事業用宅地 50% 200㎡ 貸付事業継続要件など

取得者別の要件(居住用宅地の場合)

配偶者の場合
配偶者は無条件で特例を適用できます。居住継続要件や所有継続要件がないため、最も確実に特例を受けられる立場にあります。

同居親族の場合
被相続人と同居していた親族は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月)まで、その宅地に居住し続け、かつ所有し続けることが条件となります。申告期限前に売却したり、引っ越したりすると特例を受けられません。

家なき子の場合
被相続人と同居していなかった親族でも、一定の要件を満たせば特例を適用できます。主な要件は以下の通りです。

  • 相続開始前3年間に自己または配偶者の持ち家に住んでいないこと
  • 相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがないこと
  • 被相続人に配偶者がいないこと
  • その他細かな要件を全て満たすこと

併用上限への注意
複数の区分を併用する場合、居住用330㎡+事業用400㎡=最大730㎡などの合算制限があります。全ての宅地に満額適用できるわけではない点に注意が必要です。

注意点
特例を適用するには、遺産分割を確定させて申告期限内に申告する必要があります。遺産分割が決まらず申告期限を過ぎてしまうと、原則として特例は適用できません。ただし「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、後日適用できる場合もあります。

3-2. 配偶者の税額軽減

配偶者の税額軽減は、配偶者が取得した遺産について、「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い方の金額まで相続税がかからない制度です。この制度により、多くのケースで配偶者の相続税はゼロになります。

出典: No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

例えば、遺産総額が2億円で配偶者が1億円を相続した場合、1億6,000万円以下なので配偶者の相続税は発生しません。また、遺産総額が3億円で法定相続分が2分の1(1億5,000万円)の場合、配偶者が2億円を相続しても1億6,000万円まで非課税となります。

適用要件
この特例を受けるには、申告期限までに遺産分割が完了していることが必要です。分割が未了の場合は原則として適用できませんが、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後日適用が可能になる場合があります。

二次相続への影響
この制度は非常に有利ですが、一次相続で配偶者の税額軽減を使いすぎると、二次相続(配偶者の死後)の相続税が高くなることがあるため、注意が必要です。

理由は、一次相続で配偶者が多くの財産を相続すると、配偶者の死亡時(二次相続)に法定相続人が減り、基礎控除額が下がるからです。さらに、配偶者の税額軽減も使えなくなるため、トータルの税負担が増える可能性があります。

そのため、一次相続の段階で二次相続も見据えた遺産分割を検討することが、長期的な節税につながります。

✓ポイント: 小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減を組み合わせることで、相続税を大幅に削減できます。ただし、特例を受けるには必ず申告が必要であり、分割が完了していることが要件となります。また、配偶者の税額軽減は二次相続も考慮して活用する必要があり、小規模宅地等の特例は併用上限や細かな要件があるため、相続専門の税理士と相談しながら最適な遺産分割を検討することをおすすめします。

4. 事例でわかる!相続税のシミュレーション

具体的な事例を使って、相続税がどれくらい変わるのかシミュレーションしてみます。数字で見ることで、特例の効果を実感できるはずです。

4-1. 事例設定

以下の条件で相続が発生したケースを想定します。

項目 内容
家族構成 被相続人(父)、配偶者(母)、子2人
遺産総額 1億5,000万円
内訳 自宅不動産6,000万円、現金預金9,000万円
自宅の条件 母は被相続人と同居、特例適用可能

4-2. シミュレーション

ステップ1:基礎控除額を計算
法定相続人は3人(配偶者、子2人)なので、基礎控除額は以下の通りです。

3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円

ステップ2:小規模宅地等の特例を適用
自宅不動産(6,000万円)に特例を適用すると、80%減額されます。

6,000万円 ×(1 - 0.8)= 1,200万円(評価額)

特例により、4,800万円の評価減が実現します。

ステップ3:相続税額を計算

出典: No.4155 相続税の税率(速算表)|国税庁| https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4155.htm
出典: No.4152 相続税の計算|国税庁|https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm

特例適用前の場合
- 課税遺産総額:1億5,000万円 - 4,800万円 = 1億200万円 - 法定相続分で按分:配偶者5,100万円・子2,550万円・子2,550万円 - 速算表で算出税額: - 配偶者:5,100万円 × 30% - 700万円 = 830万円 - 子:2,550万円 × 15% - 50万円 = 332.5万円 ×2人 - 相続税の総額(算出合計)= 約1,495万円

この総額を実際の分割割合に応じて各人に按分し、配偶者の税額軽減などの税額控除を差し引いて各人の納付税額が確定します(配偶者分は軽減により0円になり得ます)。

特例適用後の場合
- 正味遺産:1,200万円 + 9,000万円 = 1億200万円 - 課税遺産総額:1億200万円 - 4,800万円 = 5,400万円 - 法定相続分で按分:配偶者2,700万円・子1,350万円・子1,350万円 - 速算表で算出税額: - 配偶者:2,700万円 × 15% - 50万円 = 355万円 - 子:1,350万円 × 15% - 50万円 = 152.5万円 ×2人 - 相続税の総額(算出合計)= 約660万円

この総額を実際の分割割合に応じて各人に按分し、配偶者の税額軽減などの税額控除を差し引いて各人の納付税額が確定します(配偶者分は0円になり得ます)。

特例の効果
小規模宅地等の特例を活用することで、相続税の総額は約1,495万円から約660万円へと、約835万円も減少します。さらに配偶者の税額軽減を適用することで、実際の納付税額はさらに抑えられます。正確な最終税額は分割の仕方次第ですが、特例を知っているか知らないかで、これだけの差が生まれるのです。

✓ポイント: このシミュレーションからわかる通り、特例の活用有無で納税額は大きく変わります。ただし、実際の相続では不動産の評価や遺産分割の方法によって税額が変動するため、個別の状況に応じた専門家のアドバイスが重要になります。

5. まとめ:早めの対策で無駄な税金をなくす

不動産の相続税は、特例の活用によって納税額が大きく変わります。特に小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減は、非常に大きな節税効果をもたらす制度です。

しかし、特例の適用要件(分割要件・居住継続要件など)、併用上限、二次相続への影響など、考慮すべき点は多岐にわたります。複雑な不動産相続においては、相続専門の税理士に相談するのが賢明な選択です。

市川市で不動産の相続や売却を検討されている方は、株式会社NR企画にお気軽にご相談ください。地域に根ざした豊富な経験を活かし、相続不動産の評価から売却まで、トータルでサポートいたします。

早めの対策が、無駄な税金をなくす第一歩です。相続が発生する前から準備を始めることで、より多くの選択肢を持つことができます。不安や疑問があれば、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。適切な知識と準備があれば、相続税の負担を最小限に抑えながら、円滑な相続を実現できるはずです。

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監修者情報

株式会社 NR企画
代表 北川圭一

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